【購入ガイド】 レーザーカッター & 3Dプリンター 比較

DIY

家庭用のデジタルファブリケーション機器として、CNC、レーザーカッター、3D プリンターなどがありますが、特徴は異なっているため、個々人の目的によって適切な機器が異なると思います。

私はレーザーカッターと3Dプリンターを所有しておりますので、単なるスペック比較でなく、使用した経験を踏まえてこの2つを比較しました。

これからデジタルファブ工具の購入を検討している人に向けて、レーザーカッターと3Dプリンターのどちらが自分の用途に合っているのかの参考になればと思います。

所有機器

現在、レーザーカッターと3Dプリンターの両方を保有しています。

レーザーカッター

現在使用しているレーザーカッターは Cubiio2です。これが1台目になります。去年Kickstarterで購入しました。ただ、入手時期と海外駐在・転職の時期と重なってしまい、まだ考えていた以上には使用できていません。Cubiio2に関しては、紹介記事を含め複数記事を書いていますので、気になる場合にはそちらをご覧下さい。

3Dプリンター

3Dプリンターは現在2台目となっています。

1台目は Printrbot社の “Simple Metal”でした。確か2014年ぐらいから使用していました。制御ボードが壊れてしまい(恐らく雷による停電)、現在使用している機種も気になっていたので、これを気に買い替えました。

Printrbot社は残念ながら2018年に閉鎖されてしまったようです。

米国3Dプリンタメーカー「Printrbot」が事業閉鎖 | 3DP id.arts
2011年にKickstarterで成功した3Dプリンタメーカー「Printrbot」が資金難から事業停止を発

現在使用しているのは、Prusa Research の ”Original Prusa i3 MK3S+”です。2018年から使用しています。このブログではまだ詳しく書いていませんが、ユーザーがよくわかっている機種で、かなり満足しています。

Original Prusa i3 MK3S+ 3D printer | Original Prusa 3D printers directly from Josef Prusa
Assembled and factory-tested 3D printer. Top-quality 3D prints, removable print sheets, and ready-to-print settings! 24/7 support. Made in EU, worldwide shippin...

3Dプリンターとレーザーカッター比較

選択のためのフローチャートを作ろうかとも思いましたが、個々人の目的によって変わるため、色々な項目ごとに個別比較しました。

使用容易性

レーザーカッター

調整パラメーター少ない => 調整が楽で失敗が少ない

3Dプリンター

調整パラメーターが多数=> 調整が大変で失敗が多い

レーザーカッターは、加工位置以外では、レーザーパワー、速度、繰り返し回数の3つのパラメーターのみを調整します。

一方、3Dプリンターは、ノズル温度、ノズル速度、Headbedの温度、Fan調整、Retraction長さ・速度、サポート有無、ノズルのクリアランス、等々多数あり、それらはフィラメント毎に微妙に最適な調整ポイントが変わってきます。

そのため、レーザーカッターのほうが、調整が簡単であり、失敗の可能性が低く、再現性が高く、使用の容易性は高く、レーザーカッターの方が初心者にとっつきやすいと思います。

(ただし、これは家庭用機器のレベルの話であり、産業用レベルですと話は変わるかと思います)

加工データ

レーザーカッター

画像ファイル (bmp, png, jpeg)、2D ベクターデータ(SVG)、イラストレーターファイル(Ai)

3Dプリンター

3Dデータ (STL,OBJ)

大きな違いとしては、レーザーカッターは画像データを彫刻用に使用できることです。

また、レーザーカッターは2Dデータなので、2D, 3D両方とも全くの初心者だとすると、レーザーカッターの方が基本的にはデータ作成が容易です。

精度・再現性

レーザーカッター

高い精度が出やすく、 再現性も高い

3Dプリンター

同じフィラメント・同じ条件でプリントしたとしても、プリント時のバリなどが生じて完全に同じにはできない

家庭用では高い精度(感覚的には0.5mm以下程度)を”安定的に”出すのは難しい

現状の家庭用3Dプリンターでは、同じフィラメント・同じ条件でプリントしたとしても、全く同じモノを作るのは難しいです(ヤスリで削ったりプリント後に自分で加工すれば整えれますが)。これは溶かして層を重ねるという3Dプリンターの特性上仕方ない点かと思っています。

一方、レーザーカッターは、レーザーで溶かす・燃やす幅があるためそれを計算に入れる必要はありますが、操作パラメーターが少なくレーザーで照射するだけなので、レーザーカッターの方が精度も高く再現性が高いです、そのため、同じものを複数作りたい場合にはレーザーカッターの方が向いていると思います。

素材

レーザーカッター

彫刻と切断で異なるが、多様な素材が利用できる

既存の製品を加工できる

3Dプリンター

家庭用3Dプリンターでは、ABS, PLA, PETGなどの ”合成樹脂”

フィラメントで1から造形する

業務用3Dプリンターでは金属や食料などありとあらゆる素材が今使えますが、一般的な家庭用3DプリンターではABS, PLA, PETGなどの ”合成樹脂”です。

一方、レーザーカッター(家庭用で一般的はダイオードレーザー)では、彫刻と切断で異なりますが、かなり幅広い素材が使用できます。

また、レーザーカッターは既製品の加工ができる点が3Dプリンターとの大きな違いです(ipadの名入れ等)

加工時間

レーザーカッター

数分 – 数時間程度(家庭用機器の大きさ&経験上の想定加工内容)

3Dプリンター

10分 – 数十時間程度(家庭用機器の大きさ&経験上の想定加工内容)

もちろん、加工内容によって加工時間は大きく変わりますが、レーザーカッターは素材を切っていくのに対して、3D プリンターは素材を1から形成していくため、基本的にはレーザーカッターの方が加工は早いです。特に大きな面積の加工・造形についてはレーザーカッターの方が早いです。

ただ、別途記事を作ろうかと思いますが、私が購入したレーザーカッター (Cubiio2)では、長時間の加工(30分程度)になると、温度が上がってしまい、冷却のための一時停止&手動で再開が何度も繰り返されてしまい、かなり手間がかかりました。3Dプリンターは時間はかかりますが、放置でOKなので、手間はかかりませんので、レーザーカッターの機種によっては長時間加工はすごく作業効率悪くなってしまう可能性があります。冷却機能のあるレーザーカッターもあるため、その場合には長時間連続使用が可能です。

加工形状・造形形状

レーザーカッター

平面 (厚みがある素材の加工はできるが、加工は2D)

3Dプリンター

立体

当たり前の比較なのですが、最大の違いだと思うので敢えて載せました。

やはり3Dプリンターとレーザーカッターの最大の違いは、自由度の高い立体が造形できるかどうかだと思います。

レーザーカッターでも、平面を組み合わせることで立体を作ることはできますし、そのような例はたくさんあります。ただ、Jointが必要になるため、弱くもなり、設計も大変ですし、作れる形にも限界があります。同じ形状が3D プリンターで作れるのでしたら、3Dプリンターで作ったほうが良いと思います。

例えばシンクの三角コーナーをアクリル板で作ってみましたが、時間はかかりますが3Dプリンターで作った方がデータ作成も含めて楽でした。アクリル板の価格も高いので。

音・匂い

レーザーカッター

音・振動は少ない

外へ排気しないと匂いや塵が部屋に充満してしまう

3Dプリンター

機種によるが、音・振動は近くで寝るのは難しいレベルには出る

匂いは素材によるが、長時間使用しても(個人的には)換気が必要なレベルではない

音・振動はレーザーカッターの方が明確に少ないです。

ただ、レーザーカッターは、紙のカットや彫刻ならフィルターだけでも何とか耐えられますが(それでも、匂いは3Dプリンターより強く、はっきりとします)、基本的には外への排気が必要だと思います(消臭・集塵装置が付いたレーザーカッターもありますが、家庭用としては高価になります)。

レーザーカッターは、匂いだけでなく、カットした時の塵・ヤニも飛び散るため、使用後は毎回内部をアルコールで拭いています。また、長時間使用していると、隙間から外部にも少し漏れ出してきてしまいます。

価格

非常にざっくりですが、価格帯としては下記のようになると思います。

レーザーカッター

家庭用初級機:5-10万(注:安価な製品はパワーが弱く、彫刻メインでカットは紙/布程度しかできないです)

家庭用中級機:15-30万

家庭用上級機:30-100万 (CO2レーザーの大部分はこの価格帯になります)

3Dプリンター

家庭用初級機:3-10万

家庭用中級機:10-20万

家庭用上級機:20-60万

クラス別で見ると、レーザーカッターの方が若干高い値段になると思います。

ただ、3Dプリンターとレーザーカッターでは値段が上がると変わる項目が違います

価格によって変わる主要項目

レーザーカッター

加工面積、レーザー出力、レーザー種類、集塵装置

3Dプリンター

加工体積、精度、フィラメント種類、フィラメント数

Amazonやアリババで探すと3Dプリンターもレーザーカッターも色々安価な中華品が出てきますが、ある程度の知見がある人でないと使用・評価は難しいかと思いますので、ここの議論では除きました。

ちなみに、3Dプリンターもレーザーカッターも日本語でレビューサイトを探すとかなり限られた機種しか出てこないので、下記のような英語のサイト(3Dプリンター)で調べたほうがいいと思います。

Attention Required! | Cloudflare

簡易比較マトリクス

上記の比較を簡単なマトリクスにしてみました。本当は条件によって変わりますので、あくまで超ざっくりとした目安です。

レーザーカッター3Dプリンター
使用容易性Win
加工データWin
精度・再現性Win
素材Win
加工時間Win
加工形状・造形形状Win
Win
匂いWin
価格Win

比較してみると、レーザーカッターで加工できる範囲でしたら、レーザーカッターを選択したほうが基本的には良いです。3Dプリンターを選択するのは、その名の通りレーザーカッターではできない複雑な3D造形をする場合にしたほうが良いと思います。

特に、3Dプリンターは調整が多く必要であり、フィラメント変わるとその調整も変更する必要があり、中々初心者が継続して使用するハードルが高いと思っています(簡単だと思って買ってみて、失敗続きで嫌になって辞めちゃう人がそれなりにいるんではないかと思ってます)

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